誰も教えてくれない回診の秘訣

    「研修医のくせに偉そうだ」という声が聞こえてきそうです。今回の記事は、学生〜初期研修の間に上級医の先生に指摘された回診のポイントを備忘録的にまとめたものになります。是非ご一読いただき、追加すべきものや感想等あればX(旧Twitter)などでリアクションをいただければ幸いです。

    目次

    回診とは

    回診とは医師が病棟を回って診察を行うことです。通常、受け持ち患者さんの経過をカルテで確認し、その後一人一人の病室に伺って診ることになります。カルテでいかに事前準備を行うかが最も重要になります。様々な患者さんがいる中で、どのように回診を進めるかをルーティンとして決めておくと抜け漏れなく効率的に回診を行うことができるはずです。

    回診前、カルテで確認する項目まとめ

    回診前にカルテを見て予習をします。その際に私が見ている項目は以下になります。

    • バイタル変化(体温、脈拍、血圧、呼吸数、SpO2)
    • 食事量
    • 睡眠
    • 排便
    • 医師・看護師などの記録
    • 検査結果
    • オーダー
    • 処方・注射カレンダー

    一つ一つについて解説します。

    バイタル変化(体温、脈拍、血圧、呼吸数、SpO2)

    体温はチェックする人が多いと思いますが、その他のバイタルも非常に重要です。特に呼吸数は最も重要な指標の一つであると言えます。その理由は大きく以下の2つです。

    • SpO2よりも鋭敏な指標である
    • qSOFA(敗血症の評価指標)の項目の一つである

    「SpO2が保たれているから呼吸状態は大丈夫!」と考えている人が多いですが、実際には呼吸状態が悪くなると、まずは呼吸数を増やすことによってSpO2を維持します。つまり、呼吸数増加があれば呼吸状態の悪化を事前に察知することができるのです。また呼吸数は、敗血症の評価に用いるqSOFAの項目の一つです。qSOFAの項目は以下になります。

    看護roo!『SOFAスコア|知っておきたい臨床で使う指標[8]』より引用

    特に感染症で入院しており、意識障害や血圧低下があれば必ず呼吸数はチェックしましょう。ルーティンで測られていない場合は回診の時に忘れずに測りましょう。

    食事量

    食事量も患者さんの状態を表現する重要な指標になります。私が救急外来で診た一例を紹介いたします。患者様は認知症がある高齢男性で、発熱および体動困難で搬送されました。搬入時は見当識障害もあり、疎通に難がありましたが、精査の結果尿路感染症の診断となり入院になりました。その後ご家族にお話を聞いたところ、思えば発熱の2,3日前から食事量が減っていたとの病歴を聴取したのです。症状より先に食欲不振が現れることがあります。食事摂取量の経過を確認し、減少していれば体調が悪化している可能性を考えます。私はそれ以来、経過表で食事摂取量およびその経過を確認した上で、カルテにもルーティンで転記するようにしています。感染症内科の先生も外来では必ず食事摂取量を聞くとお話ししており、重要な指標だと言えるでしょう。その先生が生活歴で聞くとおっしゃっていたもう一つの項目は次の睡眠です。

    睡眠

    寝られているかどうかは患者さんのQOLに直結します。不眠の原因には様々なものがあります。毎日寝られているかを確認した上で、不眠であればその原因を精査し、対策を考えるようにしましょう。

    排便

    医師としてはどうしても診断や治療に意識が行きがちですが、患者様としては詳細な治療法以上に食事・睡眠・排便を気にしている方が多いです。便秘や下痢がないかを確認し、もしあれば回診の際に腹部診察を行うなどして原因の精査・治療を行う必要があります。

    医師・看護師などの記録

    他の先生が診ている場合、あるいはコンサルテーションを行った場合にはその方のカルテを必ずチェックします。また看護記録も非常に重要なチェック項目の一つです。看護師だからこそ気が付くことがあったり、患者様も、看護師にだからこそ言えることがあります。他の方々が書いた記録をきちんと確認することで、患者様の状態や何を考えているかについて理解を深めることができます。

    検査結果

    検査至上主義にならないようにという自戒を込めつつ、この順番に検査結果の確認を持ってきました。もちろん診断・治療を進める上で検査は重要なのですが、それより先に、ここまでの項目を確認することで、患者様の状態をおおよそ推察しましょう。検査を行った以上はそれに対するアセスメントを行い、結果を報告する心の準備をします。

    オーダー

    患者様にとっては大きな治療方針も重要ですが、今日何があるかも重要です。リハビリがあるのか否か、検査や外来の予定が入っているのかどうかなど、大まかな時間についても把握することで患者様との信頼感を築くことに繋がると言えます。また今後の予定についても大まかに確認しておきましょう。

    処方・注射カレンダー

    現在どのような薬を入れているのかを確認します。これは普段把握できているはずですので優先度としては低いと言っていいでしょう。しかしステロイドや経口血糖降下薬などで投与量の調整を行っている薬剤については、患者様の関心が強い可能性があります。現在の投与量や今後の調整についてきちんと把握すると良いでしょう。また不本意に処方が切れないようにいつまで処方が続いているかも確認する必要があります。

    いざ回診

    カルテによる予習を踏まえて患者様の部屋に向かいます。一人一人のキャラクターなどにも異なりますが、大まかには次のような流れで回診を行なっています。

    • 患者様の状態を見て評価し、お話しを伺う
    • 辛いことや気になっていることを伺う
    • カルテの情報を元に追加で問診を行う
    • 一般身体診察および患者様ごとに注意すべき身体所見を取る
    • 今日の予定や今後の方針、検査結果などをお話しする

    患者様ごとに適宜変更しながら回診を行います。

    まとめ

    普段行っている回診について、備忘録としてまとめさせていただきました。確認すべき項目やどのような回診を行うかはある程度ルーティン化しておくと良いと思います。この記事が日々の診療の一助になれば幸いです。いいね!と思った人は共有をよろしくお願いします。毎週月曜日朝6時の投稿を目指しています。ブックマークやX(旧Twitter)のフォローも是非よろしくお願いします。

    以上、『誰も教えてくれない回診の秘訣』という話題でした。

    この記事の筆者

    駆け出し医師Dr. K

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