血液培養の適応と実臨床

    先日、日本感染症学会から、血液培養ボトルが出荷調整になるとの通知がありました。今回は血液培養の適応について再考したいと思います。

    目次

    血液培養とは

    引用:日本ベクトン・ディッキンソン株式会社『適切な感染症診療に適切な血液培養を

    上の画像が血液培養ボトルです。まずは血液培養とは何かをQ&A形式で解説します(参考:日本ベクトン・ディッキンソン株式会社, 日本感染症学会, 医学書院, 看護roo!)。

    血液培養とは?

    患者さんから血液を採取して培養する検査のことを言います。ヒトの血液の中は通常、無菌の状態に保たれており、細菌や真菌は存在しません。しかし何かしらの理由で血液中に微生物が侵入することがあり、それを菌血症と言います。菌血症は過剰な生体反応を引き起こし、敗血症という深刻な病態、さらにはショックの原因になることがあります。血液培養では原因微生物を特定できるだけでなく、薬剤感受性を検査することで治療に最適な抗菌薬を知ることができます。

    血液培養の取り方は?

    採血部位の消毒が不十分だと、皮膚の常在菌が血液培養の検体に入ってしまうことがあります。このコンタミネーションを防ぐために、採血部位をしっかりと消毒します。その後、約20mLを目標に採血を行い、血液培養の2本のボトルに分注します。

    血液培養にはなぜボトルが2本あるのか?

    血液培養にはAerobic(好気性)とAnaerobic(嫌気性)の2本があり、2本で1セットになります。酸素が好きな微生物と嫌いな微生物を培養できるように2種類があるのです。特に嫌気性のボトルに空気が入ってしまわないように、採血したら先に嫌気性のボトルから血液を入れる方が良いとされています。

    血液培養は何セット取るべきか?

    1セットのみの検査では以下の2点のデメリットがあります。

    • 感度が73.1%と低い(2セットで89.7%、3セットで98.2%になる)
    • 皮膚の常在菌が出た時に本当に血中にいたのか、コンタミネーションなのかの判断が難しい

    感度を上げ、検査結果を正しく評価するために、別の採血部位で2セットの血液培養を採取するのが基本です(例:左腕と右腕など)。ただし感染性心内膜炎を疑う場合には検査感度を上げるために3セットを取ることがあります。

    以上が血液培養の基本です。それではどのような患者さんに対して血液培養を採取することになるのでしょうか。

    血液培養の適応

    血液培養の適応を考える臨床像としては以下があります(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社『適切な感染症診療に 適切な血液培養を』)。

    • 敗血症を疑う症状を認めた場合
      • 呼吸回数≧22回/分
      • 意識変容
      • 収縮期血圧≦100mmHg
    • 以下の感染症を疑い、抗菌薬を開始する場合
      • 扁桃・咽頭の周囲炎および腫瘍
      • 肺炎
      • 尿路感染症
      • 細菌性髄膜炎
      • 感染性心内膜炎
      • 血管内カテーテル感染症
      • 胆道感染症
      • 髄膜炎
      • 好中球減少時の発熱

    発熱の有無に関わらず、上記の病態に該当する場合には血液培養を考慮する必要があります。では実臨床ではどのような使い方がされているでしょうか。

    血液培養の実際

    実際の現場では発熱があればとりあえず血液培養、発熱がなくても白血球やCRPが上昇していれば血液培養を行うといったケースが多いように思います。つまり実際の適応よりも幅広く検査されているのです。もちろん検査をしないというのは見逃しの可能性を孕んでいます。しかし血液培養ボトルが生産調整になっている今、まだ見ぬ菌血症・敗血症患者さんのためにもより適正な血液培養が求められるのではないでしょうか。今後も有用な情報を発信していきますので、ブックマークやX(旧Twitter)のチェックをよろしくお願いします。

    以上、『血液培養の適応と実臨床』という話題でした。

    この記事の筆者

    駆け出し医師Dr. K

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