2ヶ月間の内科救急で、walk-inから救急車まで様々な患者さんの対応をしてきました。その中で実感した、「救急車=無料」が助長する社会の闇についてお話ししたいと思います。
実際にあった救急?症例
まずは実際にあった救急症例をいくつか紹介したいと思います。
- 症例1
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慢性疾患に対して処方を受けているが、病院の外来に行くことが面倒だと感じたため自身で救急要請した。
- 症例2
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他病院で問題行動を起こし強制退院になった。入院の希望があったことから、同院が手配した介護タクシーで自宅に帰る途中、自身で救急要請した。
- 症例3
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自宅にて血圧を測定したところ収縮期血圧が高値であった。症状はなかったが予想外の高血圧に驚き、自身で救急要請した。
これらの症例を見て、あなたは何を考えるでしょうか。今、救急車を有料化する流れに注目が集まっています。
救急車有料化
三重県松阪市では2024年6月1日から、不要だと判断された救急車利用に対しては7700円の料金がかかることになりました(参考:松阪市『三基幹病院における選定療養費について』)。個別の病院・医師が患者の状況を踏まえて判断するとのことで明確な基準はありませんが、これは賞賛されるべきものだと考えます。
「救急車=無料」のデメリット
救急車が無料であることのデメリットとして以下があります。
- 不適切利用によって税金が無駄に使われる
- 本当に救急車が必要な人が使えない
「救急車を有料にすると要請をためらい、助からない命があるかもしれない」という意見を言う人がいるかもしれません。しかしそれは物事のほんの一面しか見ていません。救急車の不適切利用が横行すると、本当に必要な人の元に救急車が向かうことができなくなり、結果的に助からない命が生まれてしまうのです。実際に総務省消防局の発表によると、119番通報を受けてから救急車が現地に到着するまでの時間は年々延長しています(下図)。
引用元:総務省消防庁『「令和5年版 救急・救助の現況」の公表』
不適切利用が増加することで到着時間が延長しているとは言えません。しかしこのように到着時間が延長している今、いかに効率よく救急車を配分するべきかを考える必要があります。「救急車=無料」を良いことに文字通りフリーライダーとして利用している人がいるということを認識し、不適切な利用だと判断された場合には対価を請求するというのは当然の社会の流れであると考えられます。
救急車を呼ぶか悩んだら
まず、明らかに緊急だと感じた場合には迷わずに救急車を呼びましょう。しかし中には救急要請をするか悩む場合があると思います。救急車を呼ぶか悩んだら「#7119」に電話をしましょう。まだ全国で使えるわけではありませんが、専門家からアドバイスを受けることができます。2024年5月現在で利用可能なのは以下の地域になります。詳しくは総務省消防庁のホームページをご覧ください。
引用元:総務省消防庁『救急安心センター事業(♯7119)をもっと詳しく!』
内科救急での研修で感じたことを元に、救急車有料化の流れについて考えることをまとめさせていただきました。いいね!と思った人は共有していただけると幸いです。毎週月曜日朝6時の投稿を目指しています。ブックマークやX(旧Twitter)のフォローも是非よろしくお願いします。
以上、『「救急車=無料」が助長する社会の闇』という話題でした。
駆け出し医師Dr. K
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